いつか日本式ジョブ型人事システムが発明される
同一労働同一賃金に抵抗する日本という「身分差別社会」橘玲の「幸福の資本論」(ダイヤモンドオンライン 2017-9-27記事)
” すでにさまざまな論者によって指摘されていることですが、欧米の会社の人事システムが「ジョブ型」であるのに対し、日本の会社は「メンバーシップ型」だという大きなちがいがあります。(中略)
ジョブ型の特徴は、仕事に必要な能力や資格が厳密に決まっており、その基準をクリアする労働者なら誰でも代替可能なようにマニュアル化されていることです。そのため同じ能力・資格で安く働く労働者(たとえば移民)がいれば、いまの社員を解雇して彼らを雇うのが経済合理的であり、中国やインドなど新興国に同じ能力・資格の人材が集まっていれば工場ごと移転するのがより合理的ということになります。
それに対してメンバーシップ型は、その名のとおり「メンバー」を中心に仕事が成立している会員制組織のことです。そこでは正会員(正社員)と非会員(非正規社員)の身分が厳密に定められ、正社員には組織(イエ)の仲間と和を保ちながら、あらゆる職務(ジョブ)に対応できる能力が求められます。このような人材は便利ですが、その能力は(たまたま入社した)特定の会社に特化しているので汎用性がありません。終身雇用と年功序列で収入を安定させることは、他社の仕事との代替可能性(転職可能性)を放棄したことへの代償なのです。”
こじか尊敬する作家橘玲氏の記事の引用です。記事では橘氏らしい痛快な語り口で日本のサラリーマンという身分制度をとてもわかり易く説明しています。特に結論を明記しているわけではないのですが、日本のメンバーシップ型よりも欧米のジョブ型人事システムが優れているという論調で書かれています。
日本のメンバーシップ型人事システムは経済が拡大する時期に合わせて最適化されていること、定年退職という区切りを前提にしていることを踏まえると、人口減少に伴う縮退する経済、100年まで伸びる寿命という環境の変化にはそぐわないことがわかります。
しかし、日本型が状況に合わないから欧米型がよいのかといえばそんなことはないかと思います。欧米型にしても欧米の歴史や文化的背景、宗教、民族の特徴などが影響して現在の制度が確立されたわけで、世界的にもユニークな文化圏である日本にそのまま定着させるのは困難だと思われます。
過去日本は外国の先進的な文化や制度をローカライズして上手に取り入れてきました。近年の日米貿易摩擦では猿真似と批判されたこともありましたが、実際は単なるコピーではないことがわかっています。欧米のジョブ型人事システムにしても、試行錯誤しながら導入し、最後には欧米企業以上に上手な日本式ジョブ型人事システムを発明するかもしれません。
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